前回は、「症状固定」の時点までの損害について説明をしました。
症状固定を迎え、完全に治っていれば良いのですが、依然として症状が残存している場合には、自賠責保険会社に対し、後遺障害を申請していきます。
症状の一貫性、通院の状況(日数等)、事故自体の状況を踏まえ、自賠責の調査事務所が判断しますが、症状が残っていても「後遺障害」として認定されない場合もあるので注意が必要です。
もし後遺障害が認定されなかった場合でも、改めて認定を求めていく異議申立てという手続もありますので、その場合でもお気軽にご相談ください。
後遺障害が認定された場合に受けられる損害の項目は以下のとおりです。
① 後遺障害慰謝料
前回説明した「通院慰謝料」は後遺障害の有無に関係なく通院期間に応じて発生するものですが、後遺障害慰謝料というのは、それとは別途発生する、今後その症状と付き合っていかなければならないことに対する慰謝料です。
いわゆる「むち打ち症」のようなケースで最も多いのが14級という等級であり、その場合の認定額は以下のとおりです。
自賠責基準 32万円
裁判基準 110万円
② 後遺障害逸失利益
これは慰謝料とは別物で、仕事(家事も含む)について、後遺障害が残ったことによる仕事の作業能率の低下に基づいて減収が生じ得るため、それを補償するものです。
自賠責基準 43万円
裁判基準
14級の場合、5%労働能力が低下するとされるため、年収の5%の減収が発生するということになります。
ただし、「むちうち症」のような症状による14級の場合、5年程度で体が慣れてくると言われ、労働能力低下期間が5年程度に限って認定されるのが一般です。
さらに、この後遺障害逸失利益は、将来の収入に関する補償ですので、将来の賃金の一部を先に受け取ることで補償を受けるということになります。したがって、5年分といっても、利息分を控除した特殊な係数をかけて損害を算出することになります。
5年分に対応する係数は、4.580という数字になっています。
したがって、具体的にいうと、損害の内容としては、基礎収入(事故前年の収入)×5%×5年のライプニッツ係数(4.580)で求められます。
例えば年収400万円の場合、400万円×5%×4.58=91万6000円となります。
ただし、これも裁判を行った場合で、交渉での解決の場合、5年ではなく3年~4年程度で算出することが少なくありません。
※以上はあくまで、14級の場合の話で、それ以外は5年間に限定されません。
後遺障害が認定されるか否かで、このように賠償額が全く変わってきます。後遺障害の申請前でも結果が出た後でも十分に弁護士にご相談頂くメリットがありますので、お気軽にご相談ください。